| 風が強く、川べりの堤の上を猛スピードで車を走らせていると、時折、ゴーッと音がして、箱型のファミリアの車体が揺れる。
運転しながら雨宮の頭には、色々な想いが渦巻いていた。
『お前を愛している』
耳元で囁いた言葉は真実だった。
自分は長い間、真実から眼を背け、結果、こんなことになってしまったのだ。
「お前を憎んでいる」
そう自分に言い聞かせていた。初めて会った時、高校三年生だった雄祐はもう自分より背は高かったが、まだあどけなく、自分を憧れを込めた眼で見詰めるその姿は、なんだか弟が出来たようで雨宮は嬉しかった。
指導すると、めきめきと上達し、「雨宮さんのようになりたい」 と言って、乗馬クラブにも入った。
いつの間にか、自分と肩を並べる程の腕になったが、競う相手が近くにいるのはいいことだと思った。所詮は金持ちの暇つぶしに過ぎないとも思っていたし、自分の言うことを素直に聞くぼっちゃんとしか感じられなかった。
英国に留学し、一年経った所で、父親が倒れたと呼び戻された。
帰って、自分のクラブの経営は破綻に瀕していると聞いたとき、唖然とした。債権者が毎日押しかけ、何一つ、出来ないでいると、雄祐がクラブを買い取ると申し出た。何も分からぬまま、判を押した。
それからの雄祐の有能ぶりに、雨宮は眼が覚める思いだった。単なる金持ちのぼんぼんと思っていたのに、雄祐は債権者を呼んで的確に処理し、父親をリハビリ病院に入れ、新たに校長を迎え、経営を立て直した。ついこの間までは、弟と思っていたのが、一年の間に自分より更に逞しくなっていて、大人の男になっていた。そばにいると、その男臭さに圧倒され、自分も征服されそうに感じた。
厩務員からの尊敬もすぐ集め、一時、離れていた会員達も戻って来て彼を称賛した。雄祐は人の上に立つ男なのだった。何一つ出来ない自分の方が、よっぽど子供なのだ。どころか、何も知らないおぼっちゃまは自分の方なのだ。根抵当に連帯保証人、手形の裏書き、すべて初めて聞く言葉だった。しかも父親が巨額の負債を抱えているのに、更に借金を重ねて自分の英国留学の費用を出し、サンダーブレイズ号を買った事を知り、愕然とした。父親の側で自分も経営に参加していたら、こんなひどいことにはならなかった筈だ。非は自分にもあるのだった……だがその後悔は屈折し、怒りとして雄祐に向けられた。
いや、怒り、憎むことで、雄祐に惹かれていくことを否定したかったのだ……雄祐が自分の家に棲まないかと誘ってくれた時は、いつか自分のものを奪った復讐を遂げるために傍にいることにしようと、自分を納得させ
た。
婚約者だった梨香子が自分を裏切って雄祐と寝たと知らされた時、恨みはしたが、無理もないと思った。雄祐には男としての魅力がある……自分よりもずっと。あの笠井という素直な青年が、眼を輝かせて「嫌いな人のそばには棲めない」と言った時、初めてはっきりと分かった。自分は雄祐の近くにいたかったのだ。壁一枚隔てた隣の部屋に雄祐がいても、決して手が届かないという苦しみは、自分を追い越して成功したことへの嫉妬にすり替えて、毎晩耐えた。
雄祐がクラブハウスの二階で梨香子と抱き合っているのを見た時は、怒りで身体が粉々になりそうだった。その怒りの原因は梨香子を盗られたことではなく、雄祐が女を抱いていることだったのだ。そう気が付いた時には、あまりの衝撃に自分で自分をコントロール出来なくなった。気が付いた時には鞍に傷を付けていた。雄祐の傍にいれば、これからも彼が女と愛し合う姿を見て苦しむことになる。パーティの席上で、梨香子が雄祐と結婚しないと言うのを聞いてホッとした。だが梨香子でなければ、別の誰かがまたきっと現れる……そんなことはとても耐えられない……。
「イギリスに行くつもりなのか」
そう雄祐に詰問され、そうすればこの苦しみから逃げ出せると思ったことは事実だ。一分一秒でも、一緒にいられないとつい、口走った……。雄祐が自分に挑みかかったのは、予想もしていなかったことだった。暴力で犯されながら、暗い怒りと悦びが相半ばした。無論、男と体験したことはなかった……無理な体勢だったので、達しはしなかったが、雄祐の太く堅い男の徴に貫かれ、揺さぶられ、突き上げられ、確かに自分も反応していた……。だが行為が終わったあと、雄祐が謝ったことで、絶望の淵に沈んだように感じた。雄祐は別に自分を愛しているから、奪ったのではない。単に自分を所有物として征服したいために抱いたのだ。
「お前は俺のものだ」犯しながら雄祐は言っていたではないか。自分の弱い立場を思い知らされ、残っていたプライドもずたずたになった。
「女漁りに行く暇がなかったら、代わりにするといい」
心にもない恨みの言葉を投げ付けて去った。
なぜあの時、自分から「愛している」と言わなかったのだろう……もし告げていたら、たとえ雄祐が自分を愛していなくても、あんな形で厩舎に一人、置き去りにすることもなく、誰かに襲われることもなかった筈なのだ。
そしてもし、頭の怪我が試合の時の落馬が原因ならば、なおのこと、自分のせいだった。雄祐の鞍を傷つけたりしなければ……合わない鞍と鐙のせいで、あんなことになったのだから、笠井に非難された通り、雄祐に怪我を負わせたのは自分なのだった。
雄祐の命を脅かしたのが自分の仕業と悟ったとき、もう傍にはいられないと思った。それでも意識が戻らない間、雄祐の大事にしていた乗馬クラブをほうり出す訳にはいかない。いない間は、とにかく自分が責任をもって、守ろう……雄祐の怪我が治るまでは。そう思って、心を殺し、仕事を続けた。本当は雄祐のベッドの傍に24時間付いていたかったが……。
今日、雄祐の意識が回復しそうだと聞いて、これで遠くへ行けると思った。今夜のうちに別れを告げようと決めていた。そのあとの身の振り方までは考えていなかったが、取りあえず両親の元へ行くつもりではいた。両親
に経緯を知らせる必要はある。だが、そのあとは……。
『誰にも知られずに、田舎に住むのもいいかも知れない……』雄祐のことを忘れるまで。それが可能かどうかは、自信がなかったが。
クラブハウスに車を横付けると、雨宮はハンドルの上に上半身を伏せて、大きく溜め息をついた。少しずつ理性が戻って来て、これからやらねばならないことが見えて来た。一緒に当直している村山という厩務員には、用があるからと言って抜け出したのだが、次の言い訳を考えなくてはならない。
『ちょっと親父には悪いけど』父が急変したと言えば、怪しまれずにここを離れることが出来るだろう。今はとにかく会って、説明をしなけ ればならなかった。何も言わずに行くことは、責任上、出来ない。
心を決め、何もなかったような顔をして、クラブハウスに入った。
「村山さん、ただいま」
ラウンジは明かりが点いていたが、無人だった。二階へ上がって当直室を覗いてみたが、やはりいない『厩舎の見回りにいったのかな』厩舎へと歩きだす。
『え?』厩舎の扉が大きく開け放されていた。
「不用心だな」脇の草むらから何やらうなり声がする。
『え?』野犬かもしれない……扉の内側に下げてある懐中電灯を外すと、点灯し、草むらに分け入る。飼料袋が投げ出されているように見え、近づくと人間だった。
「え、えッ、村山さん?」
一緒に当直していた厩務員だった。
「どうしたんですか!」抱え起こし、頭に手をやると、ぬるりとしたものに触れる。
「あッ」自分の手を懐中電灯で照らしてみると、血液だ。
「しっかりして下さい!」
村山は眼を瞑ったまま、「ひ、ひ」と言う。
「え?」
「ひ、が」
厩舎の入り口がもやもやと霞んでいる。
「『ひ』って……火のことか!」
取り敢えず村山を引きずって、厩舎から遠ざけると、懐中電灯を手に走った。厩舎に飛び込むと、電灯のスイッチを入れる。しかし明かりは点かなかった。暗がりの所々で赤い火の舌が見える。少なくとも三カ所で、火が燃えていた。
「放火だ!」手近の消火器を掴むと、一番近い火元へ走る。消火液を吹き付けると、火の勢いは弱く、すぐ鎮火した。
かなり煙が充満し始めているのに、スプリンクラーは作動していなかった。馬たちが不安がって、あちこちで蹄を鳴らす音といななきが上がっている。
ふいにサンダーブレイズのことが頭に浮かんだ。あの馬房はおが屑が敷き詰められている。藁よりも可燃性が高く、火の粉が飛んだら一気に燃え上がるかもしれない。
『駄目だ! 助けなければ!』消火器をほうり出すと、全力で走った。
サンダーブレイズは馬房の中で、おとなしく立っている。前を通り越し、雨宮は裏の川べりへ通じる扉を押し開けた。一瞬、強い風が吹き込み、炎が高くなるのが分かったが、かまってはいられない。サンダーブレイズの馬房へ戻り、柵を外す。
「サンダーブレイズ、外へ出ろ!」
たてがみを掴むと、馬房の外へ連れ出す。
「早く、こっから、出ろッ」
扉の所まで連れて行くと、力いっぱい腰を平手で叩く。サンダーブレイズは大きく首を振ると、暗闇の中へと走り出て行った。
『とりあえず、これで大丈夫だ』次はスプリンクラーだが、明かりが点かないというのは、ブレーカーが落とされたか、電線が切られたかだろ う。スプリンクラーが働かないのもその為だ。
しかし屋根のタンクに溜めてある水を、電力を使わずに撒くことも出来る。手動スイッチを入れさえすればいい。
雨宮は手にしていた懐中電灯をさっと振る。光の束が、床から壁を伝ってぐるりと一周し、その中に黒いものが見えた。
「え?」
電灯を掲げて、装蹄場へ入る。道具箱やらベンチやら桶やらが積み上げられた辺りを照らすと、焦げ茶のブルゾンとジーンズの男が立っていた。小柄だががっしりした体格で、短く切った髪をぴったり撫でつけている。日
焼けして皺の刻まれ、角張った顔には見覚えがある。
「野坂……さんか?」
次の瞬間、懐中電灯を叩き落とされ、力任せに腕を引っ張られた。
「あっ」
ちくりと首筋に痛みが走り、雨宮は身体を硬直させた。
「静かに。声を出すと、殺す」
何年か前、厩務員として働いていた男だった。雨宮は記憶を探る……競馬に凝っていて、開催日の土・日に休めないと、自分から辞めていった筈だ。
「運が悪い……こんなことになるなんて」
ちぇっと舌打ちして、雨宮の首筋にナイフをぴたりとつける。
「ちょっとした金が入り用でね、ぼやの一つも出してくれと頼まれたんだよ」
雨宮の腕を背中へと捩り上げると、「さっさと歩け」足で蹴った。
「どうして……」
「んなことは知らねえ。あーあ、ついてねぇよ。最初に下見に来た時も見つかるし。そのあとはずっと、二人で泊まってやがるから、隙はねぇし。今夜は一人だから、うまく行くと思ったのにな」
また足で雨宮の脛を蹴った。
「さっさと歩け!」
首筋にもう一度、ちくりと痛みを感じ、雨宮は息を呑んだ。この展開がまだ理解出来ない。
「火は……君がつけたのか?」
「あんた、頭、わりーな」
野坂という男は、呆れ声で言う。
「なんの……為に」
「俺だって、知らねーよ、頼まれただけだ」
誰かが乗馬クラブに嫌がらせをしようとしている、と牧之瀬が言ったことと、やっと結び付いた。
「ひ、ひどいじゃないかッ、こ、こんなこと、してッ」
男はまだ呆れ声で言う。
「雨宮さん、あんた達親子は、トロくって、でもいい奴だった。俺だってあんまし寝覚めはよくねーよ。だから村山の奴も、わざわざ、厩舎の外へおっぽってやったんじゃねーか。それにちょっとケムが出た所で、119番
してやるつもりだったんだ。邪魔したのはそっちだぜ?」
盗人の理屈という奴で、野坂は「わりーのはあんただ」と重ねて言う。
「僕をどうするつもりだ」
「俺だって殺しなんかしたくねーよ。けど、俺に頼み事した連中は、平気かもな」
またぐいと腕を捻られる。
「そいつらに引き渡すっきゃ、ねーだろ、こりゃ」
笠井がバイクでクラブハウスに乗り付けると、雨宮のファミリアがエンジンをかけたまま、停まっていた。
「まだ、いるんだ!」
ファミリアの中へ頭を突っ込み、エンジンキーを抜く。自分のキーと一緒に、Gジャンのポケットにしまった。
『なんだか、逃亡犯人を捕まえようとしてるみたいだなー』
苦笑してクラブハウスに入った。
当直室・ロッカーと覗くが、誰もいない。
『もしかしたら、馬にさよならでも言いにいったのかな?』
厩舎に近寄った時、笠井も異変に気づいた。
「火事だ!」
飛び込むと、片隅にあった消火器を取り上げる。
火元は一つではない。
『放火だ!』一つを消し、次の火元を求めて走った所で、通路の端に立っている人影に気づいた。
「雨宮さん!」
一歩、寄ると、
「それ以上、動くな。殺すぞ」
影の中から低い声が聞こえる。目が慣れて、人影は二つに分かれ、笠井は何が起こっているか理解した。
「あんたが火をつけたわけか」
消火器を握り締め、ゆっくり言う。相手の持っているのがナイフだけなのかと、笠井は念入りに観察する。こちらは二人だから、隙をつくことが出来るかも知れなかった。
「あんた、この前、来た時、ここで男と会ったろ? その人、大怪我したんだぞ」
男はびくりとした。
「あれは、俺のせいじゃねぇ……揉み合ってるうちに、あいつは自分で転んだんだぜ」
声を震わせる。
「まったくもう、ちょっと下見に来ただけだってのに、ついてねぇよ」
「ついてないついでだ、諦めろ」
笠井は一歩、近づく。男は雨宮を引きずって、後退りした。
「冗談じゃねぇ、ンなことしたら、俺の方がコンクリに詰められて、この世からおさらばだ」
「あんた、脅されてこんなことしたのか。誰に頼まれた? ヤクザか総会屋か?」
男はへぇという顔になった。
「お前、こいつより頭、切れるな。その通りさ……ノミ屋で借金、こさえてな」「え? お酒、飲み過ぎて?」
男は大袈裟な身振りをした。
「お前、頭、切れっけど、モノ、知らねぇな、バーカ、競馬だよ、競馬」
「え? 競馬?」
この状況だが、つい雨宮も口を出す。
「笠井君、呑み屋ってのはね、人に馬券を買ってあげるって言って、自分の懐に入れちゃう人のことだよ、それを『呑む』って言うんだ」
「へー、雨宮さん、物知り」
「あーもう、うるせーよ!」
男は雨宮を引きずりながら、さらに後ろへ下がる。大きく開け放された扉の前まで来た。
「こうなったら仕方ねぇ、あんたら、二人とも、黙らせるしかねぇよ」
ぐいと雨宮に喉にナイフを当てた。
「そっちのガキ、こいつの喉を裂かれたくなかったら、まず、自分で足を縛りな。お前はここで焼けてもらうしか、ねぇな」
男はすっとナイフを横に滑らせる。
「あ……ッ、つッ」
赤い線が喉に描かれ、血が僅かに滲み出す。
「や、やめろッ」
「さっさと、言う通りにしな」
笠井は消火器を手から離した。しゃがむと、男が蹴って寄越したロープを拾って、両足首に巻き始めた。
ふと黒いものが目の前を横切ったような気がして、顔を上げる。
『え……』信じられない光景が笠井の眼に映った。
「あ……」
男が雨宮の腕を後ろへ捩り、片手にナイフを持って、首筋に当てている。その状況は変わらなかったが、二人の後ろにはまるでヨーロッパの宮殿や広場に飾られているような、前脚を高く上げた馬の銅像が立っているの
だ。黒光りした馬体は筋肉が盛り上がり、眼は燠のように赤く燃えている。
『そんなはずはない……』笠井はあんぐりと口を開けた。真っ黒いその馬の銅像は、ぴくりとも動かない。『違う……お前は』一瞬の沈黙ののち、高く上がった前脚がものすごいスピードで落ちた。男の頭を、馬の蹄鉄を履いた前脚が直撃する。
瞬間、「サンダーブレイズ!」という叫びが、笠井の口から飛び出した。
ゴツンという鈍い音、「ぎゃっ」という叫び、「あっ」という雨宮の声が同時に上がった。男の身体が前に倒れ、雨宮も一緒に引き倒された。笠井は足が縺れるのもかまわず、前に飛び出した。
「雨宮さん!」
「大丈夫だ」
雨宮は立ち上がると、倒れている男を調べる。
「気絶してるだけだ」
笠井からロープを受け取り、男の手足を縛った。放心したように、扉の方を振り返る。サンダーブレイズはしっぽを振りながら近づき、首を差し伸べて鼻を雨宮に押し付ける。
「お前が助けてくれたのか……」
雨宮は我に返り、装蹄場の壁についている小さな鎧戸を開けた。中には赤い色を塗られたハンドルがある。
雨宮がハンドルを回すと、天井のスプリンクラーからシャワーのように水が噴き出す。
「もう大丈夫だ」
笠井は一気に力が抜けて、へたへたとその場に座り込む。雨宮を見上げた。
「雨宮さん、松浪さんの所へ行ってあげて下さい……松浪さんは、雨宮さんのことを愛してるんです、お願いします」
雨宮は少し顔を赤くして、笠井を見詰めた。
「僕はもう、彼には会えない。みんな、僕が意固地でプライドが高かった為に招いた不幸だ。僕の犯した罪は決して彼に許してもらえないだろう」
ほっと溜め息をついた。笠井は必死で言い返す。
「でもッ、お互いに愛してるんでしょ? 愛してるなら、どんなことでも、許せるんですよ! あ、あの……あの夜のことだってッ」
雨宮は眼を丸くして、笠井を見詰める。
「君……知ってたんだね」
「ええ、だからッ、雨宮さんも松浪さんを許してあげれば、そうすれば相子じゃないですか!」
松浪の言葉を思い出して、付け加える。
「松浪さんはッ、初めて会った時からあなたが好きだって、あんなこと、するつもりじゃなかったって。見てるだけで良かったんだって……雨宮さんと一緒に試合に出て、決勝に残るのだけが望みだったって」
「決勝に……僕と?」
大きな眼をさらに見開いて、雨宮はどこか遠くを見るような表情になった。
小さく動いた唇から言葉は漏れなかったが、笠井には、
『ゆうすけ……』
確かにその名前が聞こえたように思えた。
雨宮は眼を瞬かせ、後ろを向くとサンダーブレイズのたてがみを掴む。慎重に馬房へと連れて行き、柵を閉めた。そして笠井に背を向けたまま、
「そうだね」
今度ははっきりと声に出して言った。
「僕も、そう、思っている……雄祐といつも一緒に、試合に出たい」
「サンダーブレイズで?」
雨宮は振り返り、にっこりと頷いた。 |